やかましい君と…
作:ねこすき☆とも
おかえしCD3〜さつき〜END後の話。健二はさつきとデートすることに。
キツイ…何だこのペースは?
普通デートと言えばもとほのぼのとしているのものじゃないのか?
現に周りを見ても俺たちみたいに全力疾走している奴等なんかいない。
こいつのテンションの高さは異常だ。
俺はそんなことを考えながら自分の手を引っ張って楽しそうに走る後姿を見つめた。
俺をひっぱている人物…
雪希でもなければ日和でも、清香でもない。
俺の後輩であり、雪希の友人でもある『進藤さつき』だった。
さつきは雪希が合宿で家を空けている間、俺の世話をしに来てくれた。
最初は迷惑だったが、一緒にいる間に心を惹かれていった。
それは認めよう。
さつきを駅まで送った時、「また遊びに行こう」と言ったのは俺だ。
その事についてはまったく後悔していない。
楽しそうにしているこいつを見ていると誘ってよかったと心から思う。
問題はその後だ、「どこに行きたい?」と聞いた時に「遊園地!」と即答された。
その時に反対しなかったのが失敗だった。
前に来た時は姉と一緒だったからまだおとなしかったのだが普段のこいつのテンションを忘れていた。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
「はい?どうかしましたか?」
俺の声にさつきは足と止め、こちらを振り返った。
俺は呼吸を整えると静かに言った。
「疲れた」
「はい?」
「来てからずっと走りっぱなしだ」
「そうですか?」
「そうですか?…じゃねぇ!すこし休ませろ!」
「えぇー!まだ行ってない所たくさんあるんですよ!」
「何と言われようがこれ以上は走れん」
「しかたないですね〜。それじゃ、そこのベンチで少し休みましょ」
さつきの許可を取り俺はベンチに腰をかけた。
一息つけた所で喉が激しく乾いていることに気付き、
周りを見回し飲み物の自販機を探す。
自販機を見つけると俺は腰を上げた。
「あれ?先輩、どこ行くんですか?」
「飲み物買ってくる。進……さつきはどうする?」
「あ……なんでもいいです」
「分かった」
そう言って俺は自販機の方へ歩き出した。
『さつき』…まだ呼びなれていないせいか、そう呼ぶのはどこか照れくさい。
しかし、もう俺の中でさつきは『進藤』と気楽に呼べる存在ではなくなってしまった。
一人の女の子として意識している自分がいる。後悔はなかったが不安はあった。
さつきはどうなのだろう?
ただの先輩なのか?友人の兄なのか?それとも……
普段の態度が態度なだけにこういう事は分かりずらい。
考えてみても分かることではなかった。
俺は飲み物の缶を二つ持ってさつきの待つベンチに戻った。
「ほら、これでよかったか?」
「あ、ありがとうございます」
さつきは飲み物を受け取るの飲み始める様子もなく俺の方を見ていた。
「どうした?」
「先輩、一つ聞いていいですか?」
「何だ?」
「無理してません?」
「無理?」
疲れはしたが無理をしていると言う意識はまったくない。
俺は黙ってさつきの言葉を待った。
「私の事…『さつき』って呼ぶことです」
質問の意図が分からなかったが少し考えると理解できた。
俺が今までさつきにしてきた事。
『進藤』と呼び『延髄チョップ』をかます…それだけだった。
それが何日か一緒に過ごしていたとはいえ、急に態度が変わった俺を不思議に思ったのだろう。
「嫌か?」
「いえ!そんなことはないですけど!」
「俺は無理なんかしてないぜ」
「そ、そうですか」
そう言ってさつきは飲み物を飲み出した。
ちょうどいい機会だと思い俺も疑問に思っていたことを聞くことにする。
「なぁ、俺もひとつ聞いていいか?」
「何ですか?」
「どうして遊園地なんだ?」
「え?」
「この前来たばっかりだろ?」
「どうしてって、デートといえばやっぱり遊園地じゃないですか!それにこの前はお姉ちゃんも一緒でしたし」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
雪希や日和も同じような事を言っていた記憶がある。
さつきもそうなのだろうか?
男の俺には分からないが遊園地デートというのは女の子の中で大きなウエイトを占めているのかもしれない。
「…さつき?」
「なんですか?」
「楽しいか?」
「もちろんです!」
「そうか…じゃ、行くか」
「はい!」
その後もいくつかのアトラクションを回った。
さつきのペースが少し落ちたのは俺に気を使っての事だろう。
さつきの優しさを垣間見た気がした。
一通りのアトラクションをこなした時にはすでに空は暗くなっていた。
「もうこんな時間か…」
俺は腕時計を見ながらぽつりとつぶやいた。
「そうですね…」
どこか悲しげなさつきの顔。そんな、さつきの顔は見たくない。
「なぁ…」
何か話そうと口を開いたその時だった。
パパパッ
一瞬してすべてのアトラクションのイルミネーションが点灯し辺りが明るくなった。
話しかけるのを忘れ思わず見とれてしまう。
「きれいですね…」
「そうだな」
そう呟いたさつきの横顔。
それは普段のやかましいさつきではなく一人の女の子を感じさせた。
今なら言えるかもしれない…
俺も雰囲気に酔っていたと思う。いつも以上に素直になれた。
「なぁ、さつき…」
「はい?」
「また…遊びに行くか?」
「え!…私とですか?」
「さつきって言わなかったか?」
「私でいいんですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます」
「だけどな…」
「え…」
「その前に言っておかないといけない事があるんだ」
「何ですか?」
不安そうなさつきの顔。
俺はそんなさつきの目を見て言った。
「さつき……俺と付き合ってくれ」
「せ、先輩?」
「まだ、言ってなかったからな」
「…」
「返事をもらえると嬉しい」
「わ…私も、先輩の事…好き…です」
「…よかった」
「私もです」
「さつき…」
「はい?」
「これからもよろしくな」
「…はい!」
いつもと同じ通学路
いつもと同じ道
いつもと違う事は…
「―でね雪希ちゃん!そのときのリアクションが最高だったの!」
「そうだったんだ」
「やっぱり今は若手がおもいろいよね!」
「そう…」
「ベテランの味のある芸も好きだけど私は若手の勢いのある芸も好きだな!」
「はは…」
「さつき…いつ呼吸してるんだ?」
「先輩!どういう意味ですか?」
「雪希にしゃべる間を開けてやれ」
「あ、そうですね。こめんね、雪希ちゃん」
「ううん、大丈夫だよ」
「それに、しゃべるのもいいがもう少しペースをあげないと遅刻するぞ」
「えっ!本当ですか?」
「と、いうわけで俺は走る。遅れるなよ」
「あ!先輩、待ってくださいよ!」
「はは…進藤さん、行こっ」
変わったもの…
俺とさつきの関係
前より少しおとなしくなったさつき
毎日のようにひやかしてくる雪希
これから先、いろいろな事があるだろう…
楽しいこと…
嬉しいこと…
悲しいこと…
つらいこと…
その中で俺はさつきと一緒に入れればいいと思う
やかましい…ではなく
『明るく元気』なさつきと…
[終]
後半『やかま』じゃねぇ!と、自分につっこんだ所で『やかま進藤』SSです。
やかま進藤は自分の好きなキャラなのでずっと書いてみたいと思ってました。
いざ書いてみるとぜんぜんやかましくなかったです。未熟ですね自分。
この頃【ラムネ】SSを書いていたせいか健二の口調が変です。
ばれないように少しずつ手直ししていくと思います。
作:2005/4/1
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よろしければ掲示板やメールに感想を書いてください。