健二の災難
作:ねこすき☆とも
清香END後。健二は新たな趣味に目覚めた。そんな健二に災難が襲う。
「さて、どうするか…」
俺は今、ものすごくファンシーな店の前でたたずんでいた。
過去にここに来たのは二回のみ。
いずれの時も非常に気まずかったのを覚えている。
しかし、過去二回は清香の為と言う理由で自分を納得させていた。
が、今回は完全に自分の事だ。
まさか自分がここまで砂絵にはまるとは思わなかった。
そして道具と材料をそろえる為にここに来た。
清香に言えば分けてもらえるだろうができるだけ自分でそろえたかった。
共通の趣味を持つことで清香との関係も進むかもしれない。
清香とは相変わらず軽い喧嘩仲間の延長線と言った感じだからな…
「よし!」
意を決して店の中に突入する。気分はもはやソルジャーだ。
それにここ居て知り合いに見つかるといろいろ面倒だ。
カラン―
静かにドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
さわやかな笑顔の店員さん。
しかし、一瞬表情に出た驚きと笑いを俺は見逃さなかった。
…異世界・拷問・永遠の世界(違う)・罰ゲーム・陸に上げられた魚…
人によって呼び方は様々だろう。
それ以外に言葉が見つからない。
「ありがとうございました」
店員さん挨拶をバックに店を出る。
おそらく俺はあの店員にマークされたことだろう。
後は誰にも会わずに家に帰るだけだ。
しかし、その時…
「あ…健二さん」
天はいきなり俺を見捨てたようだ。
「麻美先輩…」
「こんにちは」
「こんにちは」
「お買い物…ですか?」
「ああ…」
いきなりの遭遇。
しかし、会った相手が麻美先輩というのはまだ運がいい方かもしれない。
交渉の余地があるからだ。
「麻美先輩」
「なんですか?」
「餅でどうだ?」
「はい?」
「今日ここで俺に会った事を黙っていてくれれば餅をプレゼントする」
「お餅…」
「どうだ?」
「……わかりました」
「ありがとう」
俺は麻美先輩とがっちりと握手をすると足早にその場を離れた。
「何とか助かったぜ」
いきなり見つかったのは不幸だったが相手が麻美先輩だったのはラッキーだった。
俺は周囲に注意を払いながら家路を急ぐ。
人に見つかれば不審者と思われるかもしれない。
とにかく知り合いに見つからないようにしなければ…
「けんちゃ〜ん」
不意にぽんこつな声に後ろから名前を呼ばれた。
振り向かなくても声の主は誰か分かる。
トコトコと足音が近づき俺の真後ろで止まった。
俺は振り向かずに声をかける。
「日和…なぜ気付いた?」
俺の360度センサーに狂いはなかったはずだ。
「え、なんか怪しい動きをしてたから…」
がってむ!周りを気にしていた俺の行動が逆に目立ったようだ。
俺は意外と注意力がないのかもしれない。
清香のお母さんにも前面を取られたし…
「ねぇ、何で後ろを向いたままなの?」
「日和…頼みがある」
「何?」
「少し後ろを向いていてくれ」
「?」
「頼む」
「う、うん…」
撒くしかない…
「けんちゃ〜ん。後ろ向いたよ〜」
汗は足音を消し数歩歩くと全力で走り出した。
「けんちゃん?」
感ずいた様子の日和。
しかし、もう遅い。
今の俺は往年のベン・ジョンソンより早い!…はずだ。
「けんちゃ〜ん!待ってよ〜」
スマン日和。行かせてくれ。今は行かねばならんのだ。
「けんちゃぁぁぁぁぁん」
ドップラー効果を残して日和の声は消えていった。
そして俺は風になった。
「何をしているんだ俺は…」
風となったはずの俺はひざに手を付き肩を上下させていた。
普段運動していないので少しの運動で息が上がってしまう。
しかし、日和は撒けたはずだ。
次に会った時に優しくしてやれば問題ないだろう。
「行くか…」
呼吸を整えてぽつりと言ったその時だった…
「何処行くんですかっ?先輩っ?」
顔を上げるとそこには満面の笑みを浮かべた進藤が立っていた。
「進藤…お前…いつからそこにいた」
「先輩が猛ダッシュをしているのを見かけたんで後を付いて来たんですけど?」
後を付いて来た?
俺のスピードに付いて来たにもかかわらず進藤は汗一つかいていない。
連邦の…俺の後輩は化け物か?
…いや、俺のスピードに付いて来たのなら赤いヤツかもしれない。
余談だが、あの赤いヤツは緑のヤツに比べて出力が3割増になっているらしい。
つまり、『通常の三倍のスピード』というのはパイロットの技術によるものだそうだ。
「先輩?どうかしましたか?」
「…」
そんな事を考えていると進藤が声をかけてきた。
麻美先輩・日和・進藤…
普段街中で会うことは少ないのにこんな時に限って…
偶然が三度続けばそれは必然だという…
しかし、偶然だろうが必然だろうが今ここで進藤にマシンガントークを許す事はできない。
作者も書くことができないだろう…
それに尺も残り少ない…
「先輩?」
「なぁ、進藤。偶然が三度続けばそれは必然らしい…」
「はい?何言ってるんですか?」
「つまり、ここでお前に会ったのも必然という事になる」
「言ってる意味が分からないんですけど?」
「ならば、俺がお前に対してとる行動もまた必然という事だ」
「先輩、頭でも打ったんですか?」
「進藤、先に謝っておく…スマン」
「え?」
トスッ
まったく無駄のないモーションから放たれた手刀が進藤の延髄に直撃する。
「ガク…ガクガクガク…ガクリ」
「スマン…」
俺は進藤に謝罪すると踵を返し家に向かった。
後が怖いが進藤にかまってはいられない。
会うべき人にはもう会っただろう…
雪希は留守番をしているし清香なら会っても問題はない。
作者も南山を出す事はしないはずだ…
今は家に帰るのみ…
「ただいま」
ドアを開けるとかすかにテレビの音が聞こえた。
どうやら雪希はリビングにいるらしい。
そう思っているとリビングのドアが開き雪希が顔を出した。
「あ、おかえり。」
「ただいま」
「お買い物してたの?」
雪希は手に持った袋を見ながら聞いてきた。
「なぁ、雪希」
「何?」
「俺たちは一つ屋根の下に住んでいる」
「え?」
「お互いのプライバシーは大切にしような」
「え、え?」
「大丈夫だ!雪希に迷惑かけるような物ではない!」
「うん…」
「そういうわけで、俺は部屋に行く」
「あ、お兄ちゃん!」
雪希の言葉を待たずに俺は階段を上り始めた。
雪希と話をするにしても荷物を部屋に置かなければ。
「お、お兄ちゃん。ちょっと―」
俺の後を付いてくる雪希。
俺は後ろ髪を引かれる思いで歩き続けた。
「スマン雪希。兄は行かねばならんのだ」
「さっき清香さんが来て―」
清香が来た?なら後で電話でもしておくか。
そう思い、俺は部屋のドアに手を掛ける。
ガチャ
「お兄ちゃん留守だったから部屋で待ってもらってるけど…」
「お帰り。おじゃましてるわよ」
ガチャ
「ちょっと!何で閉めるのよ!」
ガチャ
乱暴にドアを開けると清香は俺をにらんできた。
「これは…どこでもドアか?」
「何言ってんの!?」
「お兄ちゃん?」
「まったく、せっかく遊びに来たのに……あれ?その袋…」
見つかった…いや、清香には知られてもいいのだが…
「雪希、ちょっとだけ二人にしてもらえるか?」
「あ、うん」
俺は追う言うと後ろ手にドアを閉めて部屋に入った。
「で、その袋の中身は?」
笑顔で聞いてくる清香。
清香にしてみれば馴染みのある店の袋だ。
おそらく中身も分かっているだろう。
「これは―」
ドカドカドカ
しゃべろうとした瞬間、複数の足音が聞こえてきた。
そして―
『進藤さん、ちょっと…』
『止めないで!雪希ちゃん!』
『けんちゃ〜ん!』
『日和ちゃん、麻美先輩まで…』
バン
「どういうことですか!先輩!いきなり延髄チョップなんて!」
「ひどいよ〜!置いていくなんて!」
「健二さん…お餅…」
「お兄ちゃん…ごめん…止めたんだけど…」
進藤にまくしたてられ
日和に泣かれ
麻美先輩に餅を要求された。
「分かった…話すから落ち着け」
その後は俺にとって拷問だった…
進藤を黙らせ
日和をなだめ
麻美先輩に餅を与えた
そして、謀ったようなタイミングで清香に袋の中身を晒された。
その場にいた全員にからかわれた。
ただただ顔を赤くする俺。
こいつらにしてみれば当分はネタに困らないだろう。
俺は身体を張ってネタを提供したわけだ。
周りがはしゃぐ中、俺は静かに復讐を誓った。
[終]
清香END後ですが健二ネタです。一応はコメディですがオチが…
最近まともなSS書いていないような気がします。すいません。
一度全員出してみたかったもので…
作:2005/4/5
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